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vol. 4

オーストラリアの社会福祉制度(4): 高齢者福祉のサービスの利用の仕方/予防接種あれこれ: オーストラリアでの接種スケジュール、日本との違いの解説

2020-01-21

HOPE CONNECTION INC. 新会長 デイヴィース洋子

新年あけましておめでとうございます。日本では年始めに一年の計画を立て、気持ちを新たにし目的に向かって活動される方が多いと伺っております。ホープ・コネクションは昨年の今頃はニュース・レター第一号発行、カルチャースクール開設を電話相談に加え実行目標に加え実行目標にし活動を開始、共に軌道にのせることができ、ニュースレターを通してホープ・コネクションの存在をより多くの方々にご理解いただけるようになりました。またカルチャースクールでは、”来豪者・滞在者のための生活講座”、”スポーツ講座”(オーストラリアでポピュラーなゴルフやオーストラリアン・フットボールをその方面に詳しい講師の方々がわかりやすく説明して下さいました)、そして”お料理講座”(八百屋・肉屋などで目に付く珍しい、変わった食材の使い方等)を開催参加者の方々に大変喜んでいただけました。 新年にあたり、これまで築き上げて参りました土台を元に皆様のニーズも勘案しながら”充実したオーストラリアでの生活”に役立てるカルチャースクールの続行、電話相談は従来どうり来豪者・滞在者が異文化の地で困ったときのヘルプラインとして、そしてニュース・レターにおいて皆様とのコミュニケーションをとっていきたいと思っております。 オーストラリアでは最初の社会福祉団体・ホープコネクションへの行事参加で、オーストラリアでの生活が多少なりともしやすくなれる足しになれれば幸いでございます。

カルチャースクール・お料理講座開かれる!

昨年11月21日(金)、第二回カルチャー・スクールのお料理講座がセント・キルダのMRCにて開催されました。平日の午前中にもかかわらず、十数名のご参加者があり、今回のテーマが”お料理”ということもあって、非常にリラックスしたムードのなかで行われたこの日の講座。日本ではあまり目にすることのない、一風変わった野菜・果物の名称、調理法のご紹介にはじまり、日本食を上手に調達する方法、そしてこれからの季節には欠かせないBBQのヒント集など、2時間という限られた時間のなかで盛りだくさんの内容でした。 なかでも参加者の一番人気は、やはりオーストラリアで手に入る食材を使った日本食の作り方でしょうか。研究熱心なMさんがわざわざ現物見本までご持参くださったので非常にわかりやすく、皆さん真剣な目つきでメモをとっていらっしゃいました。 *このカルチャースクールは、オーストラリアでの生活を便利で楽しいものにする、生活のヒントの講座です。あなたの趣味・特技を生かして、お互いに情報交換しませんか?また、「生徒」としての参加も勿論大歓迎です。 *次回は2月20日(金)、オーストラリア政治入門講座を予定しております。特に、政治について全く初心者の皆様のご参加をお待ちしております。一緒に楽しく勉強しませんか。詳しくは、4ページをご覧下さい。 *「こんな講座を日本語で聞きたい」「私のこの知識を皆さんにおわけしたい」等々、皆様からのアイディアも募集中です。どうぞお気軽にお問い合わせ下さい。

オーストラリアの社会福祉制度 (4)

ラトローブ大学ソーシャルワークコース

HOPE CONNECTION 顧問 ソーシャルワーカー 水藤 昌彦

老人福祉の第2回目は、実際に施設に入りたい、あるいはサービスを受けたいという場合のサービス利用について書いてみたいと思います。 まず地域のコミュニティーのなかで、今現在の家に住み続けながら各種のサービスを受けるときですが、これはお住まいになっている地域のシティ・カウンシルに問い合わせの電話を掛ければ詳しいサービスの内容、その利用の仕方を教えて貰うことができます。ホワイト・ページに載っている各カウンシルのメイン・スイッチボードに電話して、”Community Careについて聞きたい”と言えば担当の部署に繋いでくれます。またカウンシルが発行している情報誌にも問い合わせの電話番号は掲載されているはずです。シティ・カウンシルによって提供されているサービスには、食事の宅配(Meals on wheels)、掃除・買い物といった家事の補助、コミュニティー・バスなどがあり、具体的なサービス内容はカウンシルごとに異なっています。 またケア付き住宅であるホステル、老人ホーム(Nursing Home)を利用したい場合は地域毎に設置されているAged Care Assessment Team(ACAT)に連絡することになります。ACATはケアが必要だと思われる人のケアの必要性や障害の度合などを査定する機関で、ソーシャル・ワーカーがケアを希望する本人及びその家族の状況などを調査して、そのひとに一番適当だと考えられるケアの種類を決定します。これらACATの連絡先については各シティ・カウンシルに問い合わせることも出来ますし、Commonwealth Department of Health and Family Services が設置している”Aged Care Hotline”(電話番号 1800500853)に電話して情報を得ることもできます。もし老人福祉とそれに伴う費用負担の問題を特にお知りになりたい場合は、同じデパートメントが開設している”Goverment\'s Free Financial Information service”(電話番号 131021)にお電話下さい。 この記事の内容についてお問い合わせがある場合はFAXあるいは郵便にて、ホープコネクションまでご連絡ください。 *前回の記事の中で老人ホームでケアを受ける人の率は全65歳以上人口のうち1%であると書きましたが、 最新の政府発表によればこれは全70歳以上人口のうちの7.5%の誤りでした。お詫びして訂正いたします。

予防接種あれこれ

ホープコネクション顧問 精神科医 南川 節子

先ごろ、メルボルン在住のKさんから破傷風予防接種についての体験記をお寄せいただきました.わたくし自身も子供の予防接種のことで困った経験もあり、オーストラリアと日本の違いなどを中心に予防接種の話題を取り上げたいと思います.まずは、Kさんの体験記から.

オーストラリアに移住して9年目に入り、もうそろそろ破傷風の予防注射をしたほうがいいかなあと思っていた矢先、主人から電話.「会社で指切ってさあ、大したことないんだけれど、係の人に Medical Centre に連れて行かれて、破傷風の予防注射もただで打ってもらっちゃった.」とのこと.私の頭の中には、「あら、大丈夫かしら.」と「抜け駆けはずるい.」の二つのことが一度に浮かびました.結局、わたしもそこでアポイントをとり、Medicare Card をもっているので、ただで予防接種を受けることができました.その後何ヵ月かが過ぎ、仕事の関係上、日本からの留学生がキャンプに行くため、破傷風の予防接種に連れて行くことになったのですが、日にちがなく、Council Health Service の Immunisation Program では、一週間に一回のため間に合いません.GPの先生に連絡をとり、そこでは注射液をもっていたので、15ドルで受けられました.(注射液は用意してあるGPと、薬局に買いに行かなくてはならない場合とがある.)また留学生ですので支払った15ドルも健康保険である程度カバーされるとのことでした.(メルボルン在9年主婦より)” この体験記からいくつかのポイントを拾い上げてご説明してみましょう.

1)予防接種はどこで受けられるのか? かかりつけのGPのある方は、そこに行くのが一番簡単でしょう.しかし、Kさんの場合のようにBulk Billing のGPでしかも接種薬を備えているところ以外では、診察料及び薬剤料がかかります.次の選択肢は、Council Health Service の Immunisation Program を利用することです.これは、各々の地域の Council が定期的に、Community Centre などで集団接種をおこなっているもので、無料です.Medicare を持っていない方でも利用できます.Council 発行の Community Directory/Guide 等でお住まいの地域の Health Service の電話番号を調べて、日時・場所などをお尋ねください.就学児童・生徒については、日本と同じく、学校で集団接種が行われますのでそれを利用されることをお勧めします.就学前の乳幼児については Maternal and Child Health Service を通じて接種が受けられます.

2)破傷風の予防接種は大人にも必要か?

破傷風(Tetanus) の予防接種は三種混合ワクチン(DTP: 日本では DPT と言います)のなかに含まれていて、殆どの子供が接種を受けていますが、最終接種後、約5~10年経つと免疫が失われると考えられています.日本では、小学校6年生で最終接種を受けますので、二十歳を過ぎるころになれば、追加接種が必要になります.これをしなかった場合、破傷風に感染する危険性が出て来ますので、Kさんのご主人のように怪我をしたときに破傷風トキソイド(予防接種)をうってもらう必要があります.破傷風は、気にも止めなかったような小さな傷から感染することもありますので、Kさんのように定期的に予防接種を受けられることをお勧めします.

3)どんな予防接種を受ければよいか?

オーストラリアで一般に行われている予防接種は、日本と殆ど変わりませんが、接種の時期や組み合わせが多少違っていますので、それらを比べながらみてみましょう.次に挙げるのは、オーストラリアでの Immunisation Schedule です.

年齢 種類 対象疾患

2ヵ月 DTP(三種混合) ジフテリア(Diphteria)、 破傷風(Tetanus)、百日咳 (Whooping Cough)

Sabin(経口投与) ポリオ(Poliomyelitis)

Hib B型インフルエンザ菌感染症

4ヵ月 DTP(三種混合) ジフテリア、破傷風、百日咳

Sabin(経口投与) ポリオ

Hib B型インフルエンザ菌感染症

6ヵ月 DTP(三種混合) ジフテリア、破傷風、百日咳

Sabin(経口投与) ポリオ

Hib B型インフルエンザ菌感染症

12 ヵ月 MMR(新三種混合) 麻しん(はしか;Measles)、 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ;Mumps)、 風疹(三日はしか;Measles)

18ヵ月 DTP(三種混合) ジフテリア、破傷風、百日咳

Hib B型インフルエンザ菌感染症

5歳 DTP(三種混合) ジフテリア、破傷風、百日咳

Sabin(経口投与 ) ポリオ

11-12歳 MMR(新三種混合) 麻しん、流行性耳下腺炎、風疹

15-19歳で ADT(Adult Diphtheria and Tetanus :成人用ジフテリア・破傷風ワクチン)と ポリオワクチンを接種

日本との大きな違いは

*日本では5歳でのDTPの接種はなく、代わりに小学校6年生でDT(ジフテリアと破傷風の二種混合)を接種します.

*日本では現在 MMR は行われておらず、各々単独で接種.流行性耳下腺炎は任意接種.オーストラリアでは個別の接種剤は使用されていないので、三疾患のうちどれか1つのみの予防接種を希望する場合でもMMR を使用することになります.

*Hib は日本では一般には接種されていませんが、B型インフルエンザ菌は、乳幼児の肺炎・髄膜炎等を引き起こす細菌.(インフルエンザの原因であるインフルエンザウィルスとは別ものです.)

*ツベルクリン反応、BCGといった結核の予防接種は、オーストラリアではされていません.

*オーストラリアでは上の表にあるように数種類の予防接種を組み合わせて同時に接種します.わたくしの子供の例ですが、Council の Immunisation Program にMMR を接種しに行ったところ、「この子は Prep だからもうすぐ学校で DTP と Sabin の接種を受けることになるが、いま MMR をするとこのあと一月は Sabin は受けられなくなる.面倒だから今日全部やってしまってはどう?」と勧められました.全部で7つの病気の予防接種をいちどにやっていいのかしらと今までに経験のない発想にびっくり仰天しながらも、それをあたりまえのように気軽に勧める Community Nurse と Dctor の経験を信じて接種を受けさせました.そして、DTPの注射部分が少し腫れたくらいで特に問題なくすんでしまいました.数種類の予防接種を組み合わせて同時に接種した場合、免疫のでき方が悪くなるのではないかという議論が日本でもなされていましたが、MMR についての研究の結果、悪影響はないと考えられるようになっています.同時接種をするかどうかは、かなり慣習によって左右されているのではないでしょうか.とはいっても、不安や疑問があれば、十分に doctor に相談されることが大切なのは言うまでもありません.

Hope Connection では、Immunisation Program で予防接種を受ける場合に手渡される説明書の日本語訳を用意しました.これには、上記の Immunisation Schedule の他、接種を受けては行けない人の条件や副反応についての説明などが書かれています.ご希望の方は、返信用封筒を同封の上、お手紙でお知らせください.