ニュースレター 15号

ホープコネクションからのご挨拶

 メルボルンの春の気候は変わりやすく、初めてこの時期を過ごされる方にとっては戸惑いが多いかと思います。また、シドニー五輪開催年とありサマータイム(夏時間)導入も例年より2ヶ月ほど早まり、スタート時の朝6時はまだ薄暗く、春とはいえ冬のような寒さを感じたものでした。

 さて今年もすでに一年の四分の三が過ぎてしまいました。このご挨拶を書いている時点では各国の五輪参加選手がすでにシドニー入りし、最後の調整に入っています。一方、シドニー五輪委員会( SOCOG)、NSW州側はシドニー五輪の成功を願って日夜会場等の最後の点検に追われています。一番の悩みはやはり禁止薬物の持ち込み及びテロ事件でしょう。一般の観光客の数は五輪開会式を前にして膨れ上がることから、選手に対してだけではなく薬物の取り締まりが今まで以上に厳しくなっています。つい先日、日本からのお客様を空港に迎えに行った折のことです。成田発QF22便到着が掲示されてから最初の乗客が外にでてくるまでに40分、私の知人がでてきたときには1時間半がたっていました。税関でのチェックが大変厳しかったと言っていました。これほど厳重にチェックされても、薬物がチェックの際に発見されずに紛れ込むケースもあることでしょう。日本はまだまだ薬物が人体に及ぼす悪影響の認識は少ないように見えます。薬物売買に巻き込まれないよう充分気を付けて下さい。

 さてメルボルンの10月は春の催物が目白押しにあり、シドニー五輪後も楽しみがいっぱい続きます。どうぞお楽しみ下さい。

 ホープコネクションの次回のカルチャースクールは、オーストラリアで生活する上で気を付けなければいけない一般常識、最低限の注意事項などをメルボルン領事館の天野領事にわかりやすくお話しいただきます。大勢の皆様の参加をお待ちしております。詳細は裏面カルチャースクールのご案内をご覧下さい。

カルチャースクール「オーストラリアの食材探検」紙上レポート

 去る8月19日、ホープコネクションでは「オーストラリアの食材探検」と銘うって、多民族都市メルボルンに集まる様々な食材についての情報交換会を行いましいた。食にこだわることは引けを取らず、という参加者の皆様の熱意に助けられて、活発に情報が飛び交い、大変楽しい会になりました。ご参加いただいた方々に、改めてお礼申し上げます。この会での話題は、チーズについて、健康食品である豆類の上手な利用方法、アジアの食品、日本ではあまり見かけない野菜類の話、などなどいろいろでしたが、今回の紙上レポートでは「野菜の話色々」をお届けしたいと思います

 メルボルンの八百屋さんでは普通に見かけるけれど、日本人にはなじみのうすい野菜がたくさんあります。一度試してみたいと思うけれど、調理の仕方がよく分からないため尻込みしていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。セミナーでは写真や実物をお見せしたり、味見をしたりできたのですが、紙上ではそうもいきません。

少しわかりにくいかも知れませんが、ヨーロッパでよく使われる野菜を選んで、その名前と代表的な調理法などをご紹介いたします。

 

Artichokes

周囲の葉の先をはさみで切り落として整えます。軸は2cm程残して。軸を下にして鍋の中に立たせて、沸騰させた薄い塩水に下1/3がかぶるくらいにして、ふたをして約15分ゆでます。葉を一枚ずつちぎって、溶かしバターにたっぷりのレモン汁と粗引き黒コショウを加えたものにつけて、葉の根元の柔らかい部分を歯でこそげとって食べます。テーブルにはFinger Bowl がいります。

Beet root

茎2〜3cmとしっぽ全部はつけたまま、皮もむかずに茹でます。(色が出てしまわないために。)蒸したりホイルに包んでオーブンで焼いたりも。かなり火が通りにくく、調理に時間がかかります。ゆであがったら、手袋をして、蛇口の下で皮をむきます。(手に色がつくと当分とれません。)

スライスして、red wine vinegar と olive oilとたくさんのパセリであえて、どうぞ。

Cereliac

何かの根っこのような、丸蕪をごつごつさせたような野菜。セロリの仲間で、同じような香りがします。薄切りにしてオリーブオイルをまぶし、200度のオーブンで周りに焦げ色が付くまで焼くと、Cerelic Chipsの出来上がり。きんぴらにしても美味しいかもと言う意見も出ていました。

Dates

歴史は紀元前3500年のメソポタミアに遡るそうです。なまのものとsemi-dried のものがあり、ふつうのレシピにはどちらでも使えます。切る時は、刃にひっつくため、包丁よりも料理ばさみの方がうまくいきます。お菓子に使うことが多いのですが、芳ばしく焼いたベーコンとクリームチーズ、好みのハーブとコショウをまぜたものをつめてワインのお供に。

Fennel

外側のいたんだ茎と上の方の細い茎と葉は取り除きます。薄くスライスしてなまで食べても、あつく切って茹でてもおいしくいただけます。1cm位の厚さに切って茹でたものを水切りしてグラタン皿にのせ、削ったチーズ(Gruyere, Mozzarella, Regionella,

Pecorino など)と粗引き黒コショウを振りかけて、グリルで焼き色をつけて食べてみてください。

Parsnip

白い人参のようなあの野菜です。皮をむいて、中の芯を取って使います。ピュレやローストで食べるのが一般的。

にんじん、ターニップ、ポテトなどとともに厚切りにしてオリーブオイルをまぶし、コショウをして2〜3個の皮付きガーリックとともに200℃のオーブンで約45分間、時々かえしながら柔らかくなって焼き色がつくまでローストします。

Rhubarb

甘くあじつけして食べます。パイやタルトなど、お菓子に使います。葉は有毒なので食べられません。根元のへん平な部分は取り除き、太くて緑色がかったものは筋とりをしてください。砂糖と少量の水を加えて煮て、筋の多いジャム状になったものをシリアルと一緒に朝食に食べるのがこちら風。

Silver beet

ハクサイの要領で使います。ただ、葉の外側の筋は取ってください。長すぎて冷蔵庫におさめるのが大変なので、葉の部分と軸の部分は切り離してしまいましょう。

サーディンをオリーブオイルでいためたものに、ゆでて水きりしたSilver beetを加え混ぜ合わせ、そのまま食べてもいいし、スパゲッティにのせても。松の実を加えても美味しい。

日本の社会福祉制度 社会福祉構造改革「措置から利用へ」(後編)

 前回(12号)のこの欄では社会福祉構造改革の基本的な考え方について書きましたが、今回はそれを受ける形でとくに老人介護の分野を例にとって、この改革によって何が起こっているのか、また何が起こると予想されるのかについて書いてみます。

 

 まず第一にはサービスという考え方の福祉分野への導入です。長年にわたって日本の福祉の現場では、一部の献身的なひとたちが集まって「面倒をみてあげる」といったような雰囲気の中で利用者へのケアが行われていました。いまから15年ほど前、私が高校生の頃にボランティアでちょっとのぞいたことのある老人ホームなどでも入居者に「料金と引き替えにサービス」を提供しているというような意識はなかったようですし、職員の発言を聞いていても老人を「お世話する」といったような意識が強かったように思います。こういった考え方はいまでも根強く残っていて、「福祉というのは奉仕の精神が大切だから」といったような発言をする社会福祉法人の関係者は大勢います。こういった日本の福祉の現場に従来から根強く存在する「老人をお世話する」という考え方、価値観の世界のなかに、「利用料金に見合ったサービスとしての介護」というまったく新しい考え方が構造改革によってもたらされたのです。

 余談になりますが「お世話する」と「サービスを提供する」、これら二つの言葉は似ているように聞こえるのですが、現場の職員のなかでは二つの表現が持つ語感は大きく異なるようです。お世話する、面倒を見るというのは、いわゆるウェットな感じ、言い換えれば情に訴えるような部分があるのですが、それが「サービス提供」になるとなんだかビジネスライクで冷たい感じがするという職員は多くいます。そう主張する職員の多くは自分たち生身の人間をケアしているのであって、物を作っているわけではないとも言います。

 

 第二には提供されるケアの質を問うという考え方がでてきたことです。ケアをお金で「買う」からにはその品質はきちんとしたものでないと困るというわけです。いままでの福祉の現場ではサービス内容の評価を公正に行うといった考え方はあまり一般的ではありませんでした。利用者も「お世話になっている」といったような、どちらかといえば受身な考え方をしたかたが多かったですし、ケアをする側も自分たちがお金の見返りにその介護をしているという意識は希薄だったのですから、そこで行われている仕事の質について問題にされることはあまりなかったのです。このため一部の老人ホームなどでは虐待がありましたし、そういった被害にあった人たちが相談する窓口も限られていたのです。構造改革では苦情処理のための第三者機関を設置することが義務付けられていますので、サービスの質の保証という面では一歩前進したのではないでしょうか。もちろん実効性についてはこれから注意深く見守っていく必要がありますが。

 

 第三には他業種からの福祉分野への参入とそれによる競争状態の発生があります。いままで福祉といえば地方自治体のような公的な機関か社会福祉法人と呼ばれる非営利の団体がその企画や運営を行ってきました。そこでは法人間の競争などというものは存在せず、

効率のよくない施設運営もあちこちで行われてきたのです。よくいわれることですが、従来の福祉業界には市場原理や競争原理という考え方は存在していませんでした。競争的な考え方は福祉というものにはなじまないとされ、このため民間企業の福祉分野での活動も制限されてきたのです。それが介護保険制度の導入を機に民間企業の参入が可能になったことで、一気に競争が始まりました。介護保険制度のもとではどの業者から介護サービスを買ってもよいわけですから、みな顧客の獲得競争に必死になるわけです。そして競争が始まればおのずと第二点で挙げられたサービスの質も向上していくと厚生省では見込んでいるようです。現場で見ていると確かにそういった利点もあるのですが、同時にこれは問題点もかかえています。一例をあげれば、過当な競争によってケアの質よりも経営の手腕が優れた事業者ばかりが生き残るのではないか、あるいは経営効率よりも質の高いケアを維持することを優先する施設の経営状況が悪化していき、結局利益率だけを追求する事業者が生き残っていくのではないかといったことです。ただし、介護保険導入と同時に新規に参入した某大手事業者のように、全国に介護ステーションを展開して大規模な宣伝活動を行っても、それぞれの地域にきちんと浸透できていなかったために実際の利用者獲得には結びつかなかった例もありますので、これら新規参入の事業者がどこまで伸びていくのかについては未知だと思います。実際には経営効率とケアの質の維持のふたつをどう折り合いをつけていくのか、そのバランスを見極めていく試行錯誤がこれから続いていくのではないでしょうか。

(ソーシャルワーカー 水藤 昌彦)

ドラッグ問題を考える(続)− 事例研究:娘の暴力と麻薬

 前号より引き続きターニングポイントのサンドラさんのお話をご紹介します。

 前号では、麻薬に関する知識および親子のコミュニケーションが大事であることを述べました。さて、ここでよくありそうな親子問題を例に取り上げてみましょう。

 母親と20歳になる娘がいたとします。彼女はヘロインなどの麻薬を使用しています。娘が麻薬欲しさに違法行為を働かないように、母親は娘にお金を渡しています。また、もし母親がお金を渡さなければ娘は暴力をふるいます。

 この母親は明らかに助けが必要です。娘の麻薬使用のためにお金を渡すことで譲歩しています。娘は母親を脅しています。もし、母親が娘に怪我をさせられるようなことがあれば、警察を呼ぶこともできるわけですが、母親としてためらいがあるかもしてません。

 この母親は娘にお金を渡し始めたことで慣例をつくってしまいました。娘との関係を維持したかったのかもしれません。しかし、娘が他の誰かにも同じことをしているのではという疑問も発生します。また、この状況が続けばあやまって娘が母親を事故死させてしまうような取り返しがつかない事態も考えられます。母親は自分自身の危険と娘を警察に密告したくない気持ちとの間に板挟みになった状態です。

 娘が家を出れば日々の衝突は緩和されます。母親は「おかあさんは敷金だけをあげますから、他は自分の責任でなんとかやりなさい。」と言ってみることもできます。娘は敷金を他の目的に使ってしまうかもしれませんが、それは彼女の選択でしょう。

 すでにこの母親は精一杯譲歩しています。彼女には力はありません。娘にお金を渡すことで、母親は麻薬使用に共謀しているのです。娘との関係を断ち切りたくない気持ちは母親にとって切実なことでしょう。しかし、麻薬入手の手助けをしているために娘が麻薬をやめられないことも事実です。

 母親はどんな筋書きを希望しているのでしょうか。多分、娘が麻薬使用をやめることという答えが返ってきますが、娘はもう成人して、ヘロイン常習者で、多分もう長いこと使用しています。数週間でやめられるものではありません。

 人々はつらい状況にはまり込んでしまうと、もう何も変わりっこない、変わるとすれば奇跡が起こるより

ないとあきらめてしまいます。希望を保つために、麻薬以前はどうだったのかを思い出してみてください。昔はどうであったか、そして、あなたが今望むことは何かを考えてみてください。

 母親は、手始めに「2週間でいいから家から娘がいなくなって欲しい」と望んでいるだけかもしれません。そのような休息を、どうやってとることができるでしょうか。どのようにしてサポートを探せばいいのでしょう。もし娘が改善する気がまったくないのであれば、戦略はほとんどありません。母親にできるのは各種サービスについての情報を集めて、娘がそれを手に取ることを待つのみです。

 Direct Lineのような電話相談サービスに電話をするのは勇気が必要です。しかし、あなたのジレンマを話し、どう感じているかを話してみることが助けになるかもしれません。Direct Lineは麻薬関連サービスについて情報提供するほか、心理学者、医師、精神科医を紹介することもできます。

 一方、娘もこの生活に嫌気がさしているのかもしれません。母親は娘にお金を渡す以外の何らかの手助けを提供してあげることができればと思います。

ウエストメルボルンのAustralian Drug Foundation 図書室では教育用ビデオを貸し出しています。Australian Drug Foundation は小、中学校にて麻薬教育を提供しています。今日ではほとんどの子供達が学校で麻薬教育を受けます。

 

Direct Line 電話03 9416 1818

Australian Drug Foundation 電話03 9278 8100

電子メールadf@adf.org.au

 今回はサンドラさんのお話からひとつの事例を中心にまとめました。8月18日付け新聞 The Age によれば、「高校生の65%はたばこを吸ったことがあり、35%が大麻を試したことがある。また、18%が睡眠薬またはトランキライザーを服用したことがある。3%近くがヘロインなどのアヘン剤を試したことがある。1%がステロイドを使用したことがある。」と紹介しています。更に「オーストラリアにおけるヘロイン関連の死は今年初めて1000件を超える見込みである。」とのことで、若者の麻薬使用は依然として大きな社会問題のひとつとなっています。連邦政府はその対策として、教育用小冊子『私たちの最強の対麻薬武器・・・家族』を今年100万戸以上の家庭へ郵送するという

ことです。この小冊子によれば「親から麻薬の危険について学んだ者は大麻を吸引する率が36%少ない・・・コカインを使用する率が56%少ない、LSDを使用する率が65%少ない。」とThe Age 紙は伝えています。予防対策に親の役割が大きいことを改めて考えさせられます。           (この稿終わり)